モン・サン・ミッシェル

　10世紀の修道院設立以来、この島は巡礼地として栄えてきました。当時から周辺の潮の干満差は激しく、巡礼者たちは島と陸がつながる干潮時をじっと待って、島へと渡っていたそうです。しかし、一度彼方まで引いた潮が押し寄せる速さは、“馬の駆け足”と例えられたほどで、多くの巡礼者が潮に飲まれ命を落としたといいます。１９世紀にようやく島と陸をつなぐ堤防ができ、この悲劇の歴史は幕を閉じました。
　巡礼者たちが命をかけて訪れたこの修道院は、まるで天界へ届かんばかりと高くそびえる尖塔が印象的。堅固な外観は、修道院と言うよりもむしろ砦を思わせます。実際、長い歴史の中では要塞として使われた時代もありました。石造りの回廊をはじめ内部には、数世紀を経た建物だけが持つ荘厳さが漂っています。
　しかし神聖な修道院の島も裾野には賑やかな街が広がり、かつて巡礼者たちに振舞われていたという名物のオムレツを出すレストランや土産物屋が軒を連ねており、中世の風情を残す石造りの家が続く街並みを散策するのもいいでしょう。
　いまでは年間約250万人が訪れる神秘の島モン・サン・ミッシェル。ぜひこの幻想的な姿を自分で体験したいものです。

　モン・サン・ミッシェルの最上階から見るパノラマの景色は、その美しさのあまり、長い階段を上った疲れを忘れさせてくれるほどの感動を与えてくれます。また、レストランや土産物屋がところ狭しと軒を連ねるグランド・リュ（大通り）の散策も楽しみの一つです。